なぜ、昔は会社のためにと働いたか?
このコラムは、
現場とのやりとりの中で感じたこと(一次情報)から、
自分なりに考えたことをアウトプットしたものです。
不完全なものであり、
時間の経過とともに変わることをご了承の上、
お読みください。
コンサルティングの現場で思うこと:なぜ、昔は会社のためにと働いたか?
経営者から、
仕事に対する社員の意識を変えて欲しいと
相談されることが多いです。
「昔は会社のために尽くしてくれた社員が多かった」と、
経営者の方は言います。
具体的には、
朝早く来て掃除したとか、ごみを拾うなど、
嫌な仕事も進んでやったなどです。
私はその時代に生きていませんので、
逆に「なぜ、昔の人は会社のために尽くしたのか」
という視点で考えてみました。
日本の経済は、
戦後からバブル崩壊前までの40年にわたって成長を続け、
企業も同じように成長を続けました。
ITが発達していない過去においては、
企業の成長は、規模の拡大に伴い人員の増加と給与の増加をもたらしました。
特にバブル崩壊前までは、
給与が増加するカーブは急激で、
「企業の成長=個人の給与増」という関係が成立していました。
仕事をこなせば、会社も大きくなり、給与も増える。
つまり「個人の努力→会社の成長→個人の給与増」
という図式が成立していたと考えます。
そのため、昔の人は会社の成長のために尽すことが当たり前だったのだと思います。
しかし、バブル崩壊後は状況が一変します。
度重なる不況を乗り越えた企業は、
活動拠点を世界に広げ、
利益額は大きくなっています。
一方、給与の増加するスピードは緩やかになり、
1997年を境に減少に転じています。
また、社会保障費などの増加により、
たとえ給与水準を維持できているとしても、手取り額は減っています。
給与が減少に転じている原因は、バブル崩壊を機に、
株式の持ち合いが減少し、加えて外国人投資家の株式保有比率が高くなり、
ステークホルダーの中で、株主への利益還元を無視できなくなったことが考えられます。
また、不況を乗り切るための構造改革の一環として、
単純作業は、非正規社員が担う割合が拡大したことも考えられます。
バブル崩壊を通じて、
「個人の努力→会社の成長→個人の給与増」という図式が成立しなくなり、
現在は、「会社の成長≠個人の給与」との図式が、
若い社員の共通認識なのではないかと考えます。
この図式から若い社員は会社のために尽くすのではなく、
仕事とプライベートをきちんと分けるようになったと想像しています。
また、単純作業の従事者が非正規社員に移行したことに起因して、
「ごみを拾うという仕事は付加価値の低い仕事で社員の仕事ではない」というメッセージを、
社員は受け取っているのではないかと思います。
私のクライアントは中小企業が多く、
社長への利益還元をあまり考えなくても良い場合が多いです。
そのため、社長の許可が得られれば、
「個人の努力→会社の成長→個人の給与増」につながるような仕組みを導入することが可能です。
このような制度を導入すると、社員の意識は高まり、自発的に掃除をしたり、
ごみを拾ったりするようになります。
現在の社員の行動は、環境に合理的に合わせた結果であり、
若者の意識が下がったり、変わったのではないと考えております。
経営者のやることは、若者の行動を変えるような環境を作ることだと感じています。