経営診断報告書作成のポイント

今回は経営診断報告書で押さえるべきポイントについて解説していきたいと思います。

 

 

経営診断報告書で押さえるべきポイント

 

 ヒアリングや各種分析を行い、いよいよ経営診断報告書の作成です。報告書作成のポイントをまとめると以下のようになります。

 

1.依頼者やステイクホルダーの目的に合致していること

依頼者やステイクホルダーの目的に合致していることが最低限の条件です。それに加えて+α( おまけ)もつけるようにします。

 

2.会社に合意された内容であること

内容が会社に理解されていることが必要です。

 

3.分かりやすい内容であること

適切な構造化とサマリーがあることが必要です。

 

4.関係者に配慮されていること

経営者、管理者の人格否定などにつながらないよう、表現などの工夫も必要です。

 

5.生産性を考慮していること

フレームワークの流用などを行い、調査の漏れなどによる戻りを防ぎ、報告書作成の時間を短縮します(作成者側の生産性改善)。

 

 以上のポイントについて、ここから具体的に見ていきましょう。

 

 

 

依頼者やステイクホルダーの目的に合致していること

 

当然ながら、報告書の内容が依頼者やステイクホルダーの目的に合致していることは最低限の条件です。ただ、この目的は明確になってないことがあるので注意が必要です。

 

報告書は見せて終わりではなく、その後も次期経営計画の参考資料になったり、現場の教育に使われたり、金融機関への報告に使用されたりする可能性があります。コンサルタントは常に報告書(コンサルタントにとっての製品)がどのようにまわるかを意識した上で、それに合わせた形で作成する必要があります。

 

 金融機関からの紹介案件の場合は、改善の余地がどれくらいあるのかを聞かれる場合もあります。その場合の「改善」とは経営改善のことであり、「PLの改善」と捉えて損益のシミュレーションを報告書に入れておくとよいでしょう。

 

 

報告書には求められていること以上の+αをつけると、関係者から喜ばれることがあります。ここから私が関わった事例を3つほど紹介します。

 

 

【事例1】

再生支援協議会から生産部門の事業DDのみを受注した事例です。計画作成は別の会計士の先生だったので、その先生に繋ぐような形でアクションプランと算出根拠を提示した報告書を作成しました。

 その会計士の先生からは、この仕事の後も時々相談が来るようになりました。誰しも仕事がしやすい人と一緒に組みたいと思うものなので、後工程を担う人がいる場合、その人のことも考えてあげるとよいと思います。

 

 

 

 

【事例2】

再生支援協議会から事業DDのみを受注した事例です。この事例は計画策定まで至らなかった案件で、数字は必要なかったのですが、会社の目標となるような形で再生への道筋を見える化しました。

 

 

 

【事例3】

こちらも再生支援協議会から事業DDのみを受注した事例です。従業員への事業DD報告を実施した際におまけとして、検査の改善の具体策を提示しました。

 

 

 

 

会社に合意された内容であること

 

 報告書は、会社が納得し、合意された内容であることが必要です。特に事実の誤認については注意が必要です(ヒアリング調査が主体であることを常に意識する)。

 

 以下は私の昔の失敗例です。

 

 

 

ホワイトボードで議論を見える化するようにしてから、このようトラブルは、ほとんどなくなりました。しかし、診断の流れの中で、常に合意を取りながら進んでいくことは欠かさないようにしています。

 

私は以下のような流れで4回ほど、合意形成のために、相手と確認をしながら診断を進めています。

 

 

 

 

 

合意形成のポイントと内容は、下記の通りです。

 

 

 

 

ビジュアル化の大切さ

 

 私は物事を伝える際にはビジュアル化が大切だと考えています。そう考えるようになった理由は、かつて約3年間、実行支援した企業での出来事にあります。

 改善担当は、Mさん。大手D社から定年後、能力を買われ転職してきた方です。この会社の問題点は、従業員が自由に、自分のペースで仕事をしていることでした。私は作業指示をすべきと主張しましたが、Mさんは、この会社ではハードルが高いと主張されました。

 

 そのまま契約終了となったのですが、その後もあきらめきれず、ダメもとで写真とメールを送付してみました。

 

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鍛冶田様

××のMです

情報ありがとうございました。 本日、××常務が××に出向きますので、早速展開するように指示をいたしました

 

これなら実施できそうな気がしまして。

 私も、今月20日以降に出張しますので、実施できているかを確認してくるつもりです。 本当に良い情報をいただきまして、ありがとうございました。

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 結局、改善案の実現可能性が3年間伝わっていなかっただけだったのです。これ以降私はできるだけビジュアルを用いて説明をするように心がけています。

 

 

 

分かりやすい内容であること

 

 報告書は伝わらないと、意味がありません。文章の分かりやすさは当然のこととして、テンプレート、サマリーの2点を意識して作成するように心がけています。

 

 私の場合、写真や図表を多く使うので、報告書はパワーポイントで作成することが多いです。テンプレートに関しては各スライドのどこに何が書いてあるかが、大まかに決まっていると読みやすくなります。またポイントごとにサマリーを付けると分かりやすくなります。

 

 ポイントは事実、問題点、課題を1枚の中に入れることです。

 

 

このようにすることで、クライアントと合意のプロセスで、どこに問題があるのかを明確にすることができます。

また修正があった際にも一枚のシートにしていた方が、一部を直せばいいので楽になります。

 

 

 

 

 

●構造化

要所、要所でまとめのシートを作っておきます。まとめのシート部分を読んだだけで、概ね分かるようにしておくと、短い時間で報告しなくてはならない場合でも対応することができます。

 

 

私の報告書の参考事例を紹介してきましたが、実際にみなさんが報告書を作成するときにも自分なりのテンプレートを作って作成するとよいでしょう。

 

 

関係者に配慮されていること

 

 報告書は、それを読んで改善に向かってもらうものであるので、読んだ後に「よし、やろう!」という気分にさせるのがベストです。そのためには、下記のことを意識することが重要です。

 

①問題の原因を人に持っていかない

②問題点だけでなく、良い点も書く

 

 ある企業では、私の前に入っていたコンサルタントが報告書に「最大の問題は、『社長』」と明記し、社長が非常に傷ついていました。その結果、何かにつけ「どうせ俺が悪いんだ」という気持ちになり、自暴自棄になってしまっていました。

 

 「人間は環境の動物」ということを意識し、問題点は人にあるのではなく、適切な仕組みが無い環境を問題とすべきなのです。仕組みなど、環境を変えることで問題を少なくし、収益改善を行うということが健全な方向性です(もちろん、社長のキャラによっては書いても大丈夫な場合もあります)。

 

 また、事業再生の場合、社長を問題としてしまうと、現実的に変えることが難しいのにもかかわらず、社長を変えることが事業再生に必要なことになってしまいます。

 

 

生産性を考慮していること

 

 

 どんなに良い報告書を作っても、スピードがないと、売上は大きくなりません。スピードを上げるためには、生産性の向上が必要です。そのために私は以下のことを意識しています。

 

①守破離

 他人の真似から入り、最低限の品質を確保しつつ、生産性を上げる

②テクニックの学習

 作業部分については、いかに生産性を上げるかを学ぶ

③事例の整理

 事例については整理をし、引き出しを作っておく

 

 

 

 

 テクニックとしては以下のようなパワーポイントのショートカットキーを覚えておくと、資料の作成スピードを速くすることができます。

 

 

 

まとめ

 今回は私の失敗談も紹介しましたが、報告の段階で失敗してしまってはこれまでの努力が水の泡になってしまいます。今回ご紹介した報告書作成において気を付けるポイントを意識して、相手に受け入れられ、行動に移してもらえる報告書を作成しましょう。

 

 

 

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