改善案を実行してもらうにはどうすればいいか?

 今回も改善案の作成について解説していきます。前回、実効性の高い改善案のチェックポイントとして以下の5点を紹介しました。

 

①具体的な内容か?

②運用が考慮されているか?

③社員が改善案にコミットしているか?

④背伸びした内容になっていないか?

⑤前提と問題を誤っていないか?

 

 今回は上記の③~⑤について説明していきます。

 

 

 

 

社員が改善案にコミットしているか

善案が実行されるかは社員のコミット次第

社員が改善案にコミットしないと実行されず成果は出ません。社員に改善策に対してコミットしてもらう際の考え方の基本は、社員の意識を「他人事」から「自分事」に変えることです。これの考え方は事業再生の場面でも同じです。

 

社員の意識を変えるためのポイントは下記の通りです。

 

 

・本人に決めさせる

 コンサルタントがコーチ的な役割で導く

・未来を想像させる

 「やらないとどうなるか」を話し、未来を想像させる

・説得する

 とにかく、熱く説得する

 

 

振る舞いと実行度

相手のレベルに合わせて、こちらの振る舞いも変える必要があります。以下の図はこちらの振る舞いと相手の実行度の関係を示したものです。

 

 

 ティーチングはこちらが手取り足取り教えながら、改善策を実施してもらう方法です。ただ相手は自分事として捉えづらいので、実行度は低くなります。従業員の業務レベルが低く、自分の専門性が高い場合に向いていて、改善の初めの段階で結果が出ると、自分の信頼につながる場合もあります。

 

 コーチングは相手に「答え」があるという想定で意見をまとめていく手法です。ティーチングの場合とは逆に従業員の知識レベルが高い場合や専門性の高い業務の改善に向いています。相手が自分で考えた改善策となるので実行度は高くなります。

 

私の場合はどちらか一方ではなく、両方の手法を取り入れながら一緒に改善案を考えていくことも多いです。ティーチングだけでは実行度が高まりませんし、反対にいきなり改善案を出してくださいと言っても、出てこないことが多いからです。

 

従業員と一緒に改善案を考えながら、途中では他社の事例など参考になりそうな情報提供を行い、議論を導いていきます。最終的には従業員の方に意思決定してもらい、自分事として考えてもらうことで実行度を高めていきます。

 

 私が理想と考えるスタイルは星野リゾート代表の星野佳路さんの手法です。星野さんは「指示ではなく、社員自身に 決めさせる」という考えをよく述べられていますが、実際には星野さんの考え通りに社員は動いています。表では自分たちに決めさせるようなスタイルを取りながらも、裏では社員の2歩先を行き、気づかれないように社員を導いているのです。

 

 

 

未来を想像させる

 相手に動いてもらうためには、具体的な未来を見せてあげることも必要です。例えば以下のような会話をして、社員に明るい未来を想像してもらいます。

 

【会話例】

・(鍜治田)Aさんは、会社が赤字だと不安だよね。会社はあくまで、Aさんが幸せになる道具だと思うんだよね。自分の将来についてどう考えていますか? 

・(Aさん)給料も安いし、転職したいですよね。 

・(鍜治田)転職するなら、今の給料が安いからやめると言うのは、良い条件で転職できないよ。僕もそうだったからね。 

・(Aさん)そんなの自己責任じゃないですか。

・(鍜治田)でも、ローンとか大丈夫?

・(Aさん)そのときは売ればいいです。

・(鍜治田)そんなに単純じゃ、ないけどなぁ。今の言葉、奥さんにも言える?

・(Aさん)・・・。どうすればいいんですか?

・(鍜治田)私は、○○をすれば、業績は良くなる見込みはあると思うよ。みなさん、次第 だけどね。一度、本気でやり切ってみない?

 

 

 

 

説得する

とにかく熱く説得することも大切です。こちらに熱意がないと伝わりません。

 

ただ、「熱意」が「怒り」にならないように注意が必要です。熱意がありすぎると、「自分が一所懸命やっているのになぜ行動してくれないんだ!」と、怒り出す人がいます。コンサルタントは経済合理性を追求するものです。怒ってしまうとコンサルタントの価値は減ることになります。

「押す」と「引く」をうまく使うことも必要です。「社長と合意できないのであれば、成果は出ないので、私はやめる覚悟があります」(引く)と言うことも時には必要です。

 

また相手を全否定しないことも大切です。「経済合理性の観点(社員の気持ち、・・・)からすると、××は良くないと思います。ただ、社長の思いもありますので、判断願います」などの言い方で、説得の際には社長の意見にも配慮することが必要です。自分の意見としてではなく「A社では、こんなことがありました」という形で他社の事例として話し、気づいてもらうような説得の仕方をすることもあります。

 

 また誤解が起きないよう、ホワイトボードなどで情報を整理しながらコミュニケーションを行うよう注意しています。

 

 

話し方は「PREP」で

話し方で意識していることは「PREP」です。「PREP」とは「結論・理由・事例・結論」の順番で説明する手法です。

 

時々この話し方でもトラブルになる方がいます。「Reason」のところで「大手T社では成果が出ています」「これは常識です」などと、理由になっていないことを理由として話してしまう方です。

 

大手企業で結果が出ているからと言ってどの会社でも結果が出るとは限りません。改善案を実施すれば会社に良い効果があることを、実態に即して説明しなくてはいけません。

 

 

 

 

背伸びした内容になっていないか

アクションプランを作成するときは、モチベーションが高い状態です。そのため、量、質ともに身の丈を超えたものとなりやすいです。コンサルタントは、組織の実行力を考慮した上で、着実にできる量、質の改善案を抽出することが求められます。

 

 

アクションプラン策定の際の注意点

 アクションプラン策定の際には以下の点に注意しましょう。

 

・よくばって、たくさん盛り込んでいないか

 社員の方は日常業務もあるので、負荷が大きく増えないようなアクションプランでなければ長続きしません。そもそもやるべきことの数が多すぎると、覚えられないので実行にもつながりません。

 

・できないことを入れていないか

 あるべき姿や理想の姿を意識しすぎて、できないことを盛り込んでしまうこともありがちです。このようなプランも長続きはしないでしょう。

 

 

 

コツコツタイプが一番成果が出る

以下の図はある会社の月次の2Sの進捗状況を示しています。簡単な課題でも、進捗状況は異なります。

 

①スタートダッシュタイプは、「火事場の馬鹿力」はありますが、持続力に欠け、活動が続かない傾向にあります。②の失速タイプは締切前など一時的には頑張りますが、こちらも長続きしないタイプです。

 

一番、活動を継続して成果を出せるのは③のコツコツタイプです。このタイプは目立たないですが、最終的には一番成果を出せます。①②のタイプのように一時的に頑張るのではなく、コツコツ継続的に頑張れるような仕組みを考えることも必要です。

 

 

 

 

前提と問題を誤っていないか

 

 変えられないものを問題として捉え、改善をしようとしても時間のムダです。クライアントへの取引条件の変更のお願いなど、働きかけが重要なものもありますが、前提と問題を切り分ける必要があります。

 「前提」と「問題」を定義すると以下のようになります。

 

 

 

たとえば、コンサルタントに人の意識は変えられるでしょうか?

私は変えられないと思っています。もちろん変えられることもありますが、変えられないことのほうが多く 、再現性は乏しいと思っています。結果的に変えるきっかけをつくることはありますが確実なメソッドはありません。

 

改善に関しても、人の意識が変わらないと進まない改善はNGだと思っています。

 

では意識が変わるときはどのように変わっていくのでしょうか?私は以下2点しかないと思っています。

 

①小さい成功体験の繰り返し

小さい成功体験を繰り返しにより、少しずつ行動が変わることがあります。ただし、本人が成功と認識しないとダメなので、「成功したよ、それでいいよ」と助言が必要です。コンサルタントは、小さい成功をプロデュースしてあげることが必要です。

 

②強烈な体験(トラウマ)

失敗など強烈な体験によっても意識は変わります。しかし、どのように変わるかは予想がつきません。

 

 いずれにせよ「意識を変えろ」と言ってもうまくはいきません。クライアントは変われないからコンサルタントに頼んでいるのです。「意識を変える」のではなく、「意識を変えるための施策を導入する」ことが必要です。

 

 

まとめ

 今回は継続的に実行してもらえる改善案のポイントについて解説しました 。改善案は実行されてこそ意味があります。理想論だけを述べるのではなく、実行まで考えた改善案を策定することが大切であることを忘れてはいけません。

 

 次回からは診断報告書の作成についてお話していきたいと思います。

 

 

 

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