内部環境分析の手法~プロセス分析の手法~
前回は効果的にヒアリングを行うための手法や、注意すべき思考のクセについて解説しました。今回は業務プロセスの分析手法と複雑な問題に対処するための構造化のスキルについて解説します。
目次
プロセス分析の手順
改善の基本的な考え方は「仕事のやり方(業務プロセス)」を変え、「結果(業績)」を変えることです。そのために問題のキーとなる業務プロセスは最低限確認して、原因を突き止める必要があります。
プロセス分析の概要と手順
それではプロセス分析の概要と手順を解説していきます。
①プロセス分析の概要
プロセス分析はヒアリングをしながら業務(作業)の流れを見える化し、業務に潜む問題点、改善の方向性を明確にしていきます。
プロセス分析にはさまざまな手法がありますが、共通しているのは「箱」と「→(矢印)」で業務を見える化していく点です。
手法にはそれぞれ特徴がありますが、使う人が使いこなせるものであることが重要です。また、説明するときにも、誰にでもわかりやすい手法であることが望ましいです。
②プロセス分析の手順
ここからはプロセス分析を行う際の手順について説明します。
(1)業務の範囲の決定
まずは業務のスタートとエンドを決め、どこからどこまで分析するかを明確にします。
(2)関連部門や関係する人の洗い出し
次に関連部門や関連する人を洗い出し、書き出します。書き出す際は左から右への流れとなるようにします。
(3)ヒアリングによる書き出し
次にヒアリングをしながらホワイトボードに書き出し、情報共有をしていきます。
(4)データ化
ここまでまとめたものを、エクセルデータとしてデータ化します。
ポイントはホワイトボードとマーカー、模造紙と付箋紙などで、見える化しながら進めると事実の誤認を防ぐことができます。また、「人」ではなく「仕組み」にフォーカスを当てることが大切です。
最低限必要な情報は「誰が」「何をする」「流れ」の3つです。これに加えて確認中のメモを入れておくとわかりやすくなります。
プロセス分析に使う記号例
プロセス分析はシンプルに3つの記号で表します。種類が多いと複雑でわかりづらくなります。
問題の構造化
次は問題の構造化についてお話します。
ヒアリングを聞いただけですべてが理解できるわけではありません。複雑に絡まり合った問題については、構造化して整理することで本質に近づくことができます。
構造化はヒアリングした内容や調査でわかった事実を「原因」と「結果」でつないでいきます。その際に活用するとよいのが「新QC7つ道具」の1つである「連関図」です。
連関図の作り方
では連関図はどのように作成するのでしょうか。ここから説明していきたいと思います。
①まずはテーマ(解決したい問題)を中心に書き、テーマに関する原因と思うことを付箋紙に書き出していき、テーマの近くに貼り付けます。
②考えた原因の中で、大切だと思う原因について、さらにその原因を考えます。
③そしてお互いの「因果関係」を明らかにします。
④因果関係を明らかにしたら、それが間違いでないか確認していきます。
例えば上図のように「会議が無い」(原因)→「コミュニケーションが悪い」(結果)という形になっている場合、「会議が無いからコミュニケーションが悪い」と口に出してみて「違和感がないか」を確かめましょう。
最初に連関図を作る際には「結果」から「原因」を辿るように作りますが、確認する際は「原因」から確認してみましょう。違う方向から確認することで精度が向上します。
⑥ここまでできたら重要な要因を明確にしましょう。重要な要因は「矢印の出ている根本」の箇所のことが多いです(下図の赤破線の箇所)。
似たような手法
連関図と似たような手法として「特性要因図」と「なぜなぜ分析(ロジックツリー)」があります。それぞれの手法には特徴があるので、それを踏まえた上で使い分けることが必要です。
① 特性要因図
特性要因図とは特性(結果)に影響する要因を整理し、系統的に図解したものです。連関図とは違い要因どうしは繋げて考えないので、要因が複雑に絡み合っていない問題を扱う場合に適しています。
分析の特徴としては、全体を網羅的に分析できることや、業務を直接知らなくても参加(作成)できる点です。主に機械の要素が大きい問題に向いています。
② なぜなぜ分析(ロジックツリー)
なぜなぜ分析とは、ある一つの問題を「なぜそうなるのか」という視点で掘り下げていき、要因を探る手法です。実行する際にはある程度、対象となる問題を絞り込んでおく必要があります。「コミュニケーションが悪い」といったように、対象となる問題の範囲が広いと、ツリーの階層が多くなってしまい、分析が大変になります。
なぜなぜ分析も特性要因図同様、要因どうしが複雑に絡まり合っていない問題を扱うのに向いています。また特性要因図が主に機械的な問題向きだったのに対して、なぜなぜ分析では機械、人間どちらの問題に対しても対応ができます。
特徴は1つの問題をより深く分析できる点です。ただ、参加者が業務を熟知していないと、掘り下げていくことに限界があるので、参加者を選定する際には問題を熟知した人を選定するようにしましょう。
なお、連関図に関しても参加者には業務の熟知が求められます。業務を熟知していないとつながりを考えていくことができません。実際に行う場合は、参加者を誰にするかよく検討することが大切です。
対象による分析の特徴
先ほど「機械の要素が大きい問題に向いている」「機械、人間どちらの問題に対しても対応ができる」と書きましたが、「機械」と「人間」を分析することにはどのような違いがあるのか、まとめておきます。
① 機械系
機械的な問題は定量化して分析しやすく、問題点と原因を明確にしやすいです。時系列データを調べることで異常個所やパターンを把握しやすく、層別することでトレンドも出しやすいです。
改善の考え方としては真因を突き止めて根本策を立案するとともに、再発の兆候を突き止め、予防保全を行うという方向性です。
② 人間系
人間系の問題の場合、難しいのは問題や原因を定量化して分析することが困難な点です。定量化が難しいので原因を明確にしづらいのです。どうしてもモチベーションや人間関係などの心理面が影響してくるので、原因把握が難しくなります。
改善の考え方は「仮説検証」です。仮説の段階で有効と思われる打ち手を短いサイクルで実施してPDCAを回していきます。また、人間の場合、機械のように一度プログラムや工程を修正すれば、継続してその通りに動いてくれるわけではありません。よって、一度改善を実施するだけでなく、定着化も図る必要があります。実施から2~4週間後に再度レビューを行ったり、人事異動時には再教育を行ったりすることで、改善策を定着させていくことが必要です。
今回はプロセス分析の方法や、問題を構造化して整理する手法について解説しました。業務のプロセスを正確に把握し、問題点を構造的に理解することは、正しい打ち手を立案する上で欠かせません。紹介した手法を活用することで、効果的な施策立案に役立たせて下さい。
次回からは営業プロセスの評価や分析手法について説明していきます。